キーボードの種類
- 3つの方式による感触の違い
- キーボードの配列の違い
- キーボードの「音」について
- 照光スイッチ
- 耐油キーボード
- シートキーボード
- メンブレンキーボード
- 入力デバイスとしてのキーボードのメリット
- キースイッチの感触(クリック感とリニア感)
3つの方式による感触の違い
キーボードの種類は大きく分けて、メンブレン方式・静電容量無接点方式・メカニカルスイッチの3種類に分けることができます。
メンブレン方式のキーボードは一番一般的で多く流通しているキーボードです。
メンブレンキーボードの多くは接点の上部にラバーがあり、ラバーで接点を押す方式です。
感触はラバーが演出しており、ラバーがカクッと座屈することでクリック感を得ています。
メリットはクリック感が明確に感じられるため押した感覚が得られることです。
静電容量無接点方式の一般的なキーボードはラバーと円錐バネを用いた構造となっています。 クリック感のある感触はラバーで演出しています。 円錐バネは主にONを判定するために使用しており感触を損なわないような特性になっています。 ソフトなクリック感やスイッチの検出方法に定評があり人気の方式です。
メカニカルスイッチはスプリングと板バネを用いた構造となっており、主にメカニカルキーボードに採用されているスイッチになります。 特性としてはスプリングのリニアな感触から、クリック感があるタイプなど、沢山のメーカーが様々なメカニカルスイッチを販売しているので、感触や機能のバリエーションが非常に多くカスタム性で人気があります。
上記3つの他にもスプリングの屈曲を利用してクリック感を出す方式など様々な方式があります。 しかし、ストロークの長さ、キーの重さ、キーの高さ、摺動部の精度や摺動補助部品の有無などでまったく違う感触になります。 したがってキーボードを購入する際は実際に触って自分に合っているか確かめることをおすすめします。
キーボードの配列の違い
キーボードを選ぶ際に考慮したほうが良い「キーボードの配列の違い」についてです。 キーボードを選ぶ際に感触や機能等の比較はもちろん大事ですが配列による違いも大切です。 日本で一番一般的なキーボード配列は日本語配列です。お店で売られているキーボードはほとんどこの配列になります。 日本語配列の他に一般的な配列としてUS配列(英語配列)という配列もあります。 日本語配列に比べてキーが少なく、キートップに仮名文字も無いためスッキリとしています。大きな違いとして日本語配列にあったスペースキー周りのキーが無いため、その分スペースキーが長くなっています。また、エンターキーの形が横長になっているため小指で押す際に無理なく届くなどのメリットがあり、コアなファンが多い配列となります。
また、文字の配列だけでなくテンキーの有無も選ぶ基準となります。
テンキーのあるキーボード、いわゆるフルキーボードの最大のメリットは、やはり数字が打ちやすいということです。
これに対し、普段あまり数字を入力しない方にはテンキーがついていないテンキーレスキーボードという選択もあります。テンキーがない分コンパクトなので省スペースとなるメリットがあります。
この他にもキーの数をもっと減らした配列や、特定のキーの位置が違うなどメーカーによってもさまざまな違いがあります。お店でキーボードの感触だけでなくキー配列に目を向けて観察してみるのも面白いかもしれません。
キーボードの「音」について
タイピング音はキーボードによっても様々です。 カチャカチャするものや、静音キーボードならコトコト…またはスコスコ…系でしょうか。 近年ではリモートワークなどで静かなキーボードが注目されています。 キーボードの発する音の考察は各社それぞれであると思いますが私たちの見解でお話させて頂きます。 デスクトップキーボードの音の発生タイミングは大きく分けて以下の3種類です。
- スライダーとハウジングの隙間から生じる音
キートップに指が触れた時スライダーとハウジングのガタつきにより発生します。 グリスなどを使用することで、この音を軽減できますが粘性でキーが重くなるので注意が必要です。 - ストッパーにあたりキーが底打ちした時の音
キーを押し切った時、スライダーがストッパーに接触することで生じる音となります。 ウレタンシートなどをキーボードの下に敷くと机に響きにくくなり多少軽減できます。 - スイッチが戻る際の跳ね返り音
スライダーには抜け防止のツメがついているため、そのツメがハウジングと接触した際に生じる音です。 キーから指を急に離すと大きな音になります。
このキーを押すという一連の動作が行われた際、これらの音がタイピング音となります。 これらはキーボードのケースで増幅されたり、机に響いて増幅されたりと環境によっても大きく変わります。 キーボードだけでなく、スイッチなどの操作系は使用環境によっては静音化の課題がつきものです。 操作パネルなどの静音化にご興味ありましたら是非ご相談ください。
照光スイッチ
操作パネルの使用環境が必ずしも明るい場所とは限りません。 照光スイッチを採用することでスイッチの視認性が大きく向上します。 当社の操作パネルは照光機能をもたせることが可能で、医療機器メーカー様や工作機器メーカー様にご採用いただいています。
一般的に操作パネルに照光機能を持たせたい場合、基板に実装するタイプの汎用照光スイッチを載せれば手軽に実現可能ですが
- 部品コストが大きくなる
- 感触が他のスイッチと異なってしまう
- スイッチが単純な形状のものしかない
- スイッチ自体への印刷が容易ではない
当社では照光スイッチを含めた操作パネルとして一括での設計が可能であり、 照光スイッチ自体の形状や操作パネル全体のスイッチの感触を揃えることも可能です。 主にギアリンク構造が採用されており、キーのぐらつきを抑えることができるため感触面でもご好評をいただいています。
また、照光に対する豊富なノウハウで比較的大きなスイッチでも全体をキレイに光らせることが可能です。通常、照光スイッチ天面に印字したい場合はシートキーボード化やシールなどの貼り物が採用されがちですが、当社の方式でなら良質な感触を保ったままお客様のご要望に合わせた印字内容を印刷することが可能です。
操作パネルにノートパソコンのような薄型のキーボードを載せる場合も、ノートパソコン用のキーボードで培った導光板技術を活用し、バックライトキーボード化させる事も可能です。 操作パネルに照光機能を持たせたいとお考えの際はぜひご相談ください。
耐油キーボード
切削油がかかってしまう環境下でもスイッチのキー感触にこだわりたい。 そんなお客様に当社の耐油キーボードをご紹介します。
当社ではメンブレンシートに特殊な印刷を採用してメンブレン内に切削油等が侵入しない構造を可能とすることでメンブレン方式の耐油キーボードを実現しています。
また、キー感触のこだわりとして当社独自機構の「ギアリンク方式」を採用しています。ギアリンク方式はノートPC用キーボードで長年培ったコア技術であり、キー天面のどの部分を押下してもぐらつきを抑えて水平に上下する構造であり、安定した動作を実現できます。 キー感触のこだわり以外にも「ギアリンク方式」を耐油キーボードへ採用するメリットがあります。それが「キースタックしない」ということです。
通常のデスクトップキーボード等で採用されている「スライダー + ハウジング方式」では切削油が侵入した際にスライダーが切削油を吸い上げてしまい、ハウジングとスライダーの間の摺動部に滞留してしまいます。 滞留することでキーが重くなり、滞留した箇所にゴミが入ると最悪の場合、キーがスタックしてしまいます。
「ギアリンク方式」では摺動部に切削油が侵入しても滞留しない構造のため感触に変化が生じません。 もちろん、各部品を切削油に浸漬する評価→塵埃環境での打鍵寿命試験→感触評価、環境評価 etc...と様々な試験に合格しており、信頼性も高く安心してご使用いただけます。
この高い操作性、信頼性にキー感触という付加価値が評価され、多くの工作機器メーカー様からご採用いただいています。
シートキーボード
「操作面をフラットに見せたい」、「操作パネルに防水性、耐油性をもたせたい」そんなお客様にシートキーボードをご紹介させていただきます。
シートキーボードはタクトスイッチという小型のスイッチを採用し、その上に表面シートを貼り付けることで防水性や耐油性を付加することができるキーボードです。 キーボードに対して比較的容易に液体の侵入を阻止できることや、汚れが付着しても拭き取ることができるため、過酷な環境下で使用される機器に長年信頼され採用されているキーボード形状です。
タクトスイッチと表面シートのみで構成されるためシートキーボードの感触は、ほぼタクトスイッチの感触に依存します。したがってスイッチのストロークとしては非常に短いものになります。 もっとストロークがほしい、ソフトな感触がほしいというお客様にはタクトスイッチと表面シートの間に感触向上用ラバーを追加することも可能です。 ラバーを追加することでストロークを延長、ソフトな感触を得ることができるためスイッチを押した感覚の向上や疲労感の緩和が期待されます。 お客様の用途によって使い分けることが可能ですのでシートキーボードをご検討の際には是非ご相談ください。
メンブレンキーボード
当社のキーボードは主にメンブレン構造を採用したキーボードを開発していますが、 その「メンブレン」について深掘りしていきたいと思います。
メンブレンキーボードはメンブレンシートという部品を利用して入力するキーボード構造です。 メンブレンという言葉は膜という意味で、その意味の通り薄いフィルムを3枚重ねた部品であり、スイッチの接点を担う大切な部品です。 メンブレンシートは接点とパターンが印刷された上部シートと下部シートでスペーサという穴の空いたフィルムを挟むことで構成されています。 上部シートと下部シートに印刷された接点はスペーサによって隔てられているため、 普段は接点同士で接触することはありませんが、押下することで上部シートがたわみ、上部シートの接点と下部シートの接点が接触しONする仕組みになっています。
メンブレンシートはキーボードだけでなく医療機や工作機器、POSなど様々な産業機器に採用されており、信頼性が高い部品として評価されています。 接点の寿命よりラバーの寿命が短いため寿命はラバーに依存します。 そのため、メンブレンだから壊れやすいということはありませんのでご安心ください。 また、接点が保護されているため耐油や防滴・防塵の機能を持ったキーボードにも対応することができます。
当社ではメンブレンの特性を踏まえたスイッチの感触設計、操作パネル筐体とのトータル設計が可能です。ぜひお問い合わせください。
入力デバイスとしてのキーボードのメリット
操作パネルの入力デバイスを物理スイッチにするか、タッチパネルにするか悩まれるケースがあります。 一般的なタッチパネルの特徴として、フラットな構造があります。見た目もスッキリしており清掃なども容易であるため、多くの操作パネルにご採用頂いています。 また、UIの自由度が高く、特定の箇所のみ押せるように操作を誘導することで作業者が確認しながら操作できるため、操作ミスが起きにくいこともタッチパネルが選ばれる理由の1つとなっています。
一方、物理スイッチはクリック感やストロークがあるため「押した」感覚を演出することができるのが特徴の一つです。 触れることでスイッチを認識することができ、押す感触によって「入力している」という認識ができます。 そのため、手元を見なくても押せるスイッチや文字入力を行うキーボード、重要な動作の実行ボタンなどに採用されています。
このように物理スイッチとタッチパネルは入力装置という面では同じですが、求められる場面や役割が違うことがわかります。 こうした物理スイッチとタッチパネルの良いところ取りを組み合わせた使いやすい入力デバイスをお探しの方へ、当社では長年培ってきた入力デバイスの設計製造技術やノウハウを活かした一括設計・ご提案が可能です。 入力デバイスに課題をお持ちの方はぜひお問い合わせください。
キースイッチの感触(クリック感とリニア感)
キー感触は大きく分けて『クリック感があるかないか』で分けることができます。
クリック感があることのメリットとして代表的なものが、
- 押した感触がある入力を感触で認識することができる であり、多くのユーザーから選ばれています。
これに対しクリック感のない感触、いわゆるリニア感触を好むユーザーも近年増えています。 リニア感触のメリットとして
- スムーズなタイピングが可能底打ちしにくい があります。
底打ちというのはキーを押し切った際、ストッパーに当たった衝撃のことです。 底打ちは疲労の原因やキーボード騒音につながる場合があります。 リニア感触のスイッチはストロークの途中にON位置があるものが多く、最後まで押し切る必要がありません。さらにリニア感触はストロークが進むにつれ反発力が大きくなるため底打ち感が少ないとされます。
クリック感のあるキーボードはクリック後に更に押すことでONします。クリック感を強く設定しているものも多く、強く打鍵してしまいがちです。クリックがあることで操作荷重が減少するため指の勢いで最後まで押し切りやすく、そのため底打ち感を感じやすくなるのです。しかし、クリック感自体が悪いわけではなく、重要なのはクリックの大きさとON位置のバランスです。 クリック感は押したという重要な感覚を演出します。これはリニア感触にはないメリットです。
以上のように、クリック感もリニア感触もどちらも捨てがたいメリットがありますので、用途とお好みで自分に合うものを見つけていただきたいです。